ー差別・排外主義を許さない!7月講演集会ー
今、話したいこと―となりに住んでる世界のひと
差別・排外主義に反対する連絡会は結成14年を迎えます。
差別解消法の成立にもかかわらず、差別・排外主義は激化し巧妙化しているように思われます。
これに抗する闘いを拡げてゆくため、この集会を企画しました。金井真紀さんを講師にお招きします。
金井さんとはこれまでも「難民・移民フェス」などの現場を共有してきました。また、2022年2月には安田浩一さんとの共著『戦争とバスタオル』(亜紀書房)の取材秘話をお二人にお話しいただきました。
今回は難民・移民問題をはじめ、多様な経験や取材もふまえたお話を存分にお聞かせいただきたいと思います。
お誘い合ってご参加ください。
【講演】金井真紀さん ※プロフィールはこちらをクリックください
【日時】2024年7月7日(日)14:00開始 終了予定16:30
【会場】 品川区中小企業センター
(大井町駅東口から徒歩10分、東急の下神明駅から徒歩2分。品川区西品川1-28-3)
【資料代】 500円
【交流会】終了後は同じ会場で交流会を予定しております。
参加費はお酒を飲む方は2,000円、ソフトドリンクだけの方は1,000円をご用意ください。
持込も大歓迎です。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。
PDF版のビラはこちらをクリック願います
【この集会の報告】
7.7金井真紀さん講演 「となりに住んでる世界の人」
7月7日、差別・排外主義を許さない講演集会が、品川区中小企業センターで行われた
(参加者35人)。今回の講師・金井真紀さんは、イラストレーター&文筆家として多くの著書があり、「難民・移民フェス」実行委の中心メンバーとしても活動している。連絡会では2022年2月に、安田浩一さんと対話形式の催しを試みた。二人が国内外の温泉をめぐりながら、その土地の戦争や差別の歴史に想いを馳せるというユニークな著書『戦争とバスタオル』(亜紀書房)をメインに、取材秘話などを語ってもらったのだった。
今回のテーマは「今、話したいこと となりに住んでる世界のひと」と題して、これまで書いた本を紹介しながら、エピソードや思うことをフリーに語ってもらう形式で引き受けていただいた。
『パリのすてきなおじさん』(柏書房)。は、パリ郊外のヴァンセンヌ競馬場というところに行って、おじさんを「ナンパ」して話を聞くというもの。アルジェリアとかマリとか、いろんな国から来た人たちのドラマが語られる。『世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし』(カンゼン)は、サッカー競技や選手の話ではなく、サポーターの話が中心。サッカー場は差別の温床で、人種差別や同性愛差別もむき出しになる。その一方で、迫害されてきたクルド人のチームやサポーターのことなど、サポーターの人たちに接して見えてきた意外なエピソードも。
『世界のおすもうさん』(岩波書店 和田静香との共著)は、「沖縄角力(すもう)」との出合いから世界中の相撲を取材するという大胆な企画。沖縄の相撲大会は米兵も参加するという。仕切りと立ち合いがあるのは日本だけで、各国の相撲のスタイル(女性も多い)の違いが面白い。金井さん自身も相撲が大好きで、何と自身も回しをつけて土俵に上がるなど相撲愛に満ちあふれる。『世界ことわざ紀行』(岩波書店)は、世界中の面白いことわざを収集。生活の知恵的なものから、政治や宗教を皮肉ったものまで紹介する。
『日本に住んでる世界の人』(大和書房)は、金井さんが入管や難民の問題を取り組むきっかけとなった。たとえばコンゴのJさんは、2022年に国会前でシットインを始めたときにサポートしてくれた人。コンゴの地元の言葉である「ギンガラ語」を教えてもらったり、難民フェスで出会ったクルドの女性からは料理教室に誘ってくれたことなど、思わぬ出会いがたくさん。そして10日前に刊行したばかりの『テヘランのすてきな女』(晶文社)は、圧政下で自由を求めて闘うイランの女性たちに取材した。マイノリティの権利のために奮闘する女性弁護士、「自由を求める旗は1個ずつ運ばれる」と、イランの魅力的な女たちの生き生きとした姿が見えてくる。
金井さんのフィールドは驚くほど多様で面白い。その行動力と感性のもとになっているのは、好奇心と遊び心であり、人それぞれがその人らしく生きられる社会を目指して行動すること。世界を巡る旅はこれからも続く。
講演後の質疑を経て、会場内で行われた交流会にも、金井さんと、初めての参加者も何人か参加され、充実した催しとなった。
*******************************************************************
文化的ジェノサイドを許さない!3.24講演集会
―2つの『追悼碑』から考える―
1月29日 群馬の森で県職員が誰もいない強制連行朝鮮人犠牲者追悼碑に代執行を告げる。碑はあっという間に粉々にされ更地に。2004年建立から10年後、追悼集会参加者の発言を理由に県は許可更新を拒否。20年後に県は碑を破壊した。
9月1日 横網町公園にある関東大震災朝鮮人虐殺追悼碑の前で9月1日に行われる追悼集会。
極右団体「そよ風」が2017年以後毎年歴史を否定し犠牲者を冒とくするヘイト集会をぶつける。歴代都知事が追悼集会に送った追悼文を2017年以後小池都知事は送らない。
群馬では言葉を伝え、東京では言葉を伝えない。追悼碑との出会いや対話の機会を奪う試みは文化的ジェノサイドだ。
アーティスト飯山由貴さんをお招きし「ふたつの追悼碑」について皆さんと考えていきたい。
講師:飯山由貴さん(アーティスト)
場所:大久保地域センター 3階 会議室A(新宿区大久保2丁目12番7号 JR山手線 「新大久保」駅から 徒歩8分)
日時:2024年3月24日(日)13:30開場 14:00開始
資料代:500円
PDF版のビラはこちらをクリック願います。
【この集会の報告】
3月24日、大久保地域センターにて「2つの『追悼碑』から考える 文化的ジェノサイドを許さない3.24講演集会」が連絡会主催で行われた(63人参加)。1月29日、群馬の森における朝鮮人犠牲者追悼碑に行政代執行が強行され、碑は粉々に破壊された。この暴挙に、飯山由貴さん(講演者)らアーティスト有志が群馬県に強制撤去反対の要望書を提出した。一方で、東京・横網町公園にある関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼碑に極右団体「そよ風」らが碑の撤去を叫び、小池都知事が追悼メッセージを取り止めた2017年以来、同じ公園内で差別煽動の集会を行ってきた。飯山さんは、2022年「東京都人権プラザ」で開催された企画展に関東大震災の朝鮮人虐殺をテーマに取り入れた映像作品「In Mates」を出品したところ、東京都人権部の検閲によって中止させられた。こうした追悼碑をめぐる出会いや学び、対話の機会を奪うということは、まさしく「文化的ジェノサイド」である。講演集会ではまず、飯山さんが解説しながら「In Mates」が上映された。
<以下 講演要旨>
私はアーティストとしては2013年頃から活動してきました(主に映像作品)。一番気になったのは、一方が一方を支配する関係、たとえば医療従事者と患者、家族の中での権力的振る舞いなどです。それが何故起きるのか、なるべくその背景にある構造を描こうと努力してきました。こうした活動のきっかけになったの妹の存在です。妹は「統合失調症」を抱えてきましたが、それまでは妹の語ることば、振る舞いを受け入れることができなかった。私は別の作品で、ハンセン病で療養所に暮らす女性の話を聞く機会があり、とても大きな経験で感銘を受けました。そこから自分の家族に対して抑圧していたのではないか、やりすごしていたのではないか、と捉え返し、違う目で妹を見るようになりました。それで、彼女の幻覚や幻聴を一緒に再現しよう、2人でカメラを頭につけて、散歩することを試みました。妹も今まで話さなかったことを話すようになったのです。それから精神を病んだ人たちのことばって、日本の精神医療の中でどういう風に扱われてきたのだろうと、精神医学史の研究者である鈴木晃仁さんにインタビューしました。研究室には沢山の資料があり、その中に王子脳病院(1920年代当時)の診療記録がありました。これに関するインタビュー作品を作りはじめ、そのなかで分かったのは(当時は)患者さんは「話すこと」を求められ、それが記録になったこと。ただし(あくまで)記録は権力や制度の側の一方的ものなので、当事者と一緒に記録をつくってゆく必要性に気づいたことです。
2020年、横浜で開催されたトリエンナーレに出品した「OLD LONG STAY」(一部を上映)は在日外国人の無年金障がい者をテーマにした作品です。(私は)在日コリアンの高齢者の方が年金制度から排除されてきたことを知ったのは、2019年に東九条で参加したフィールドワークの時です。理不尽な差別の構造に気づく一方で、差別排外主義者らの運動が活性化する一つとして、「在日の特権だ」として攻撃される。しかし国は格差や差別の構造をあらためようともしません。
その中で作った『OLD~』は、運動に直接かかわるきっかけになりました。この作品のあとに手がけたのが『In
Mates』。(先述した)王子脳病院の診療記録にあった朝鮮人患者のAさんとBさんの記録に基づいてFUNIさんが話をつくって、それをパフォーマンスにすることで2人を蘇らせることができました。AさんとBさんは階級とか教育とか働いていた場所とかは全然違っていて、AからBにコミュニケーションを求めた時にBから拒絶され、錯乱状態になって「朝鮮人みな殺す」とか言ってしまう。そうした人生の一場面に、日本の植民地支配の歪みが見えてきます。この二人が見た世界を自分の作品として多くの人に伝えられないかと思いました。FUNIさん自身が社会で経験した痛みや苦しみやトラウマみたいなものを二人の関係に肉付けしてくれて作品に結実しました。また作品を作る上で、鈴木先生と歴史学者の外村大さんにレクチャー―を受けました。外村さんは、Aさんの「朝鮮人を殺す」という言葉は、関東大震災の朝鮮人虐殺が背景にあって、それが心身に影響したんじゃないかと指摘され、それは大きな示唆でした。
その「殺す」の一言が都の人権部の検閲となったわけですが、自分自身は(虐殺は)あったと認識していたとしても、そんなに関心を持っていただろうかと気づかされました。たとえば日本社会における大きな慰霊のイベントである広島や沖縄のように、虐殺が「集団的記憶」にいならなかったのは何故なのか。それは植民地支配だったことでずっと見過ごされ、軽視されてきたからではなかったか。もう1点、重要だと思うことは、黒人神学の創設者の一人であるジェームズ・H・コーン氏が、在日韓国キリスト教会との交流を通じて黒人が受けている差別・抑圧と、在日コリアンが受けている差別・抑圧との類似性を認識することによって、国境を越えて、すべての人を解放する解放の神学を再創造させるきっかけになったと書いたのを読んで、各々の属性のなかで闘争が持つ交差性みたいなものが連帯だと考えるようになったことです。
さらに今日のパレスチナの問題に引き付ければ、中村一成さんの「パレスチナの歴史的鏡像としての在日朝鮮人」というテキストを読んで、ここで引用されているガヤトリ・C・スピヴァクが96年の来日時のインタビューのなかで言及した「アジア大陸の両端には2つの不条理がある」と、それは日本とイスラエルだと、いずれも歴史的責任を認めず、ともに生きるべき隣人を頑強に拒み、西洋の一員になることを欲する。特定の人種や民族的集団を「敵」「悪」「劣なる者」と措定し、剥き出しのレイシズム国家だとする点で、両国は大陸の両端で相似形をなすという指摘に納得しました。インターセクショナリティという概念は、重複するマイノリティ性がある人の経験を説明するのに使われてきた。どうすればこのような問題を共に考え、闘争を組織化できるのか、ともに考え、実践する上で重要な問いだと思います。
最後に、東京都人権部の「検閲」と、群馬の碑撤去に関して、自分がどう関わってきたか。(人権部のメールの内容など、一連の経緯を説明)結果的には展覧会が人質にとられた。これ以上ごねると展覧会が出来なくなると人権プラザの職員にも言われました。やはりこのメール問題は重く、小池都知事の「虐殺否定」を都の職員が内面化しています。これはもう外部化するしかないと、最終的には上映中止は飲む形で展覧会は実施し、その後、抗議の署名3万筆を都に提出しました。さらに署名は4万5千筆に増えたので、都知事選が終わったところで、もう一度提出したいと思っているので、是非拡散をお願いしたい。
その後の情報開示請求で分かったことがあって、それは2022年7月の時点で人権部が作品を「人権そのものに抵触している。都の人権啓発事業として用いるのは適当ではない」判断していたこと。これは要望書の提出以降に分かったことなので別途追及していきたい。去年は9・1に向けて都庁前での直接行動を続け、当日は申入れ、ライブ、トーク、ダイイン、デモなどを行いました。今年も何らかの行動を呼びかける予定です。
(群馬の碑撤去への抗議行動など一連の経緯を説明)榎澤幸弘さんという方が、「ジェノサイド条約と文化的ジェノサイド」という論文のなかで、歴史的、芸術的もしくは宗教的価値のある文書、物品を破壊したり、その使用を変えさせることは文化的ジェノサイドだと提起しています。今回の碑の撤去は、人々が集う場所であり、モニュメントを行政権力が破壊するのを企図したことで明白に文化的ジェノサイドです。日本という国が、日本語を話す日本国籍の日本人に、すべてのマイノリティを合わせていくような、少数者の生きた証を押しつぶすやり方に、どうすれば対抗できるか。少なくとも私たち自身が、自分の記憶と経験を話し、伝えてゆくことから始めるしかないと考えています。当面の取り組みの一つとして「行政の人権侵害を考える会・関東(仮)」を立ち上げたい。ぜひご参加を!
