集会やデモ等のお知らせ

地方議会の今――ヘイトの台頭と対抗

埼玉県鶴ケ島市議会では、「外国人差別反対」を発信した福島恵美さんに市議の肩書を

使った発信の「自粛」を求める決議を賛成多数で可決した(8月4日)。

この前代未聞の不当決議は9月定例市議会でも未だに撤回されていない。

地方自治体議会でヘイトの嵐がジワジワと拡がっている。

同時に、選挙運動がレイシストたちの差別煽動の場になっている。

それは国政における極右政党の伸長を下支えするものだ。

今、何が起きているのか?

この状況を見据え、反撃の闘いをつくりだすための提起と論議の場に

多くの参集を! 

開催日時:11月30日()14時~

講師:瀧大知さん

場所:南部労政会館 第6会議室

資料代:700

11.30集会ビラ



レイシズムは世界を覆う⁉ 今こそ<抵抗の流儀>を問う
      対論 平井玄×森元斎
全世界が邪悪なる者たちによって覆われつつある今、私たちはドイツに注目する。
極右AfDの伸長、移民-クルド人排斥と対抗運動、ロジャヴァ革命の蠢動、左派の再編…。
森さんが見てきたドイツの状況とは? それらは川口・蕨をめぐる状況に繋がる。
問われているのは、変動する情勢を読み解きながら、
低迷する運動状況に一石を投じ、風穴を開ける
新たなる「抵抗の流儀」を創りだすことだ。
気鋭の論客二人の対論・提起を受けて、活発な論議を巻き起こしたい。多くの参集を!

日時:2025年4月20日(日)14時~(13時半開場)
場所:品川区中小企業センター 2階大講習室(品川区西品川1-28-3)
資料代:700円  【交流会】終了後は同じ会場で交流会を予定しております。なお、交流会は別料金になります。
主催:差別・排外主義に反対する連絡会

 【この集会の報告】
 「レイシズムは世界を覆う⁉ 今こそ<抵抗の流儀>を問う」と題し、平井玄氏と森元斎氏の「対論」が行われた。(品川区中小企業センター参加者は55名)。「対論」という言い方は、1970年代の初め頃、作家の野坂昭如と五木寛之による対談本が『対論』と付けられたことから。対談、対話、論争の要素をミックスしたような意味合いだったようだ。要は、予定調和的な慣れあいや意見交換ではなく、踏み込んだ論議で違いやことの本質を明らかにしていこう、との目論みである。 
 平井玄(ひらい・げん)氏(1952年生)は、評論から社会運動まで、幅広い分野をシャープな切り口で執筆・発言・行動してきた。森元斎(もり・もとなお)氏(1983年生)は、哲学・思想史、とりわけアナキズム研究で注目されている。今回は、森氏が何度も行き来しているドイツにおけるクルド人の現状からロジャヴァ革命の意義と現状を押さえ、極右が伸長するドイツから、左翼の変容、日本の運動・左派の思想状況の洞察まで、我々にとっての国境を越えた連帯=国際主義の課題と可能性について議論を深める、そんなイメージで「対論」が設定された。
 ロジャヴァ革命とは、シリア北部のロジャヴァと呼ばれる地域で起こったクルド人主導の武装・軍事を伴う政治的変革である。森氏は、「ハンブルグでの左派のたまり場」など、ドイツで撮ってきたスライド上映を交え、現在の左派がロジャヴァとどのようにつながっているのかを解説。平井氏は森氏の提起を受けて、「地球儀をひっくり返すー地軸を逆転させる」という独自の視点で、ドイツのクルド人たちやロジャヴァの位置、さらには日本の川口・蕨で今、起きている事態にどのように通底しているのか、そこから我々のあり様を考え直そうと提起された。
 もう一つの視点は、森氏から現在ヨーロッパを席巻している(右でも左でもない)「極・中道」(エキストリーム・センター)の実態と問題について。左派の側が十分な対抗軸足りえていない現状を、日本にも引き付けて提起。平井氏は、総選挙でも伸びたドイツ左翼の新党ザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟BSWを取り上げる。BSWは、労働や階級に重心を置く一方で、移民の限定的制限を要求するという保守的側面を持っている。それは左翼からの「解」に成り得るのかと。

 質疑では、シリアの変動のなかでアサドなきあとのロジャヴァはどうなるのか、ドイツにおけるクルド人の現状、ロジャヴァとの連帯のあり方について、日本における衰退する左派と右派の伸長についてどう見るのか、多くの質問、意見が出された。二人の提起から、これからの<抵抗の流儀>が見えてきたかといえば、そこはまだまだ、未消化のまま終わった印象だ。<対論>という試みも、各々の主張をかみ合わせて、中身を深めるところまでは行っていない、そんな現状が浮き彫りになるなど、いくつもの宿題が残った。

 集会ではさらに、川口・蕨で活動を続けるクルドヘイト裁判を支援する会のメンバーから、クルドへのヘイト言動を辞めさせるべくヘイト団体「日の丸街宣倶楽部」を訴えた裁判への傍聴(第1回口頭弁論 423日 この日は支援する会の結成集会も)と支援が呼びかけられた。集会終了後は、同じ会場で、新しい参加者も交えて、二人の講師を囲んでの交流会も行われた。



差別・排外主義を許さない!8.11緊急アクション

日時:811(月、休) 18時集合  19時デモ出発

集合場所:新宿駅東口 アルタ前広場         ビラはこちらをクリックください

極右レイシズム政党は先の参院選において想像を絶する得票数を獲得しました。比例では、参政党740万余り(前回の4倍以上)、日本保守党やN国の得票数を加えれば、1千万を超える数字です。陰謀論とデマとヘイトにまみれたカルト・妄想・差別者集団が、国政に一定の足場を固めたことは深刻な事態です。差別・排外主義の波は、社会の津々浦々に浸透し、アメリカのトランプ現象や欧州の極右伸長にも呼応しています。

 参政党党首や候補者らは、連日のようにデマとヘイトをまき散らし、抗議に対しては公然と居直り、グロテスクな本性をむき出しに暴走しています。メディアではほとんど報じられませんでしたが、選挙期間中だけでも、抗議者に対する運動員や支持者による暴行・傷害が続出しました。さらには神奈川においては、運動員が抗議者に対して「十五円五十銭と言ってみろ」と、朝鮮人を虐殺した自警団の振る舞いを模倣し、居直ってます。かかる手合いを放置することは、新たなジェノサイドの動きに手を貸すことにほかなりません。

 さらに党首も候補者もなりふり構わず、抗議者に対して「こいつらは日本人じゃない!」「非国民!」「極左暴力集団!」と悪罵を投げつけ、治安維持法や戦前の徴兵制を称賛し、

「大東亜戦争」を肯定し、当面の課題として「スパイ防止法」の制定に動き始めています。こうした動きを放置・傍観することは、屈服を意味します。そして川口・蕨のクルド人排斥の差別煽動にも火をくべることになるでしょう。

差別・排外主義に反対する連絡会は、立ち上げから15年、微力ながらもレイシズム集団の跳梁跋扈を許さない闘いを、さまざまな現場を横断しながら続けてきました。

 私たちは来る8月11日(月曜)に、新宿で「差別・排外主義を許さない8.11緊急アクション」を呼びかけます。猛暑のなかではありますが、今こそ街頭に出て、声を上げる時です。

レイシズム政党を解散させるまで闘いを止めない宣言の場としたいと考えています(当日は、歌舞伎町に近いコースを考えています)。

 あらゆる局面で「奴らを通すな!」「奴らをこれ以上のさばらせるな!」の反撃が求められています。個別課題を越えて、ともに連携して闘いましょう。各々でも自作のプラカ、

バナーなども持参してください。鳴り物・歌舞音曲も歓迎。

 ヘイトにNO! 生きる権利に国境はない! 国境を越えた連帯を!

2025年8月11日  差別・排外主義に反対する連絡会


  
 2024年12月1日 講演集会 
 埼玉県の川口市と蕨市に集住する在日クルド人に対する排斥を伴うヘイトスピーチが激化しています。そのためクルド人住民はいわれのない恐怖に脅かされています。
 今回は現地で密着取材しているノンフィクションライターの安田浩一さんに具体的な状況を熱く語っていただきます。また、「埼玉から差別をなくす会」の皆さんにはこの集会の賛同団体になっていただきましたので、市民の目から見た現地の状況を報告いただく予定です。
 多くの皆さんのご参加をお待ちしています。 
 
                                                     

【この集会の報告】

12.1 安田浩一さん講演集会

 121日、「許すな!クルド人へのヘイト攻撃 川口の現場から 講演集会」が北区王子の北とぴあで開催された(主催:差別・排外主義に反対する連絡会 賛同:埼玉から差別をなくす会)講師はノンフィクションライターの安田浩一さん。昨年来、川口に通い続け、現場からのレポートを発信し続けている(『月刊・世界』で「ルポ 埼玉クルド人コミュニティ」を連載中)。集会には日曜夜という時間帯にもかかわらず107名もの参加者で椅子が足りなくなるほど。地元の川口・蕨で活動を続けている市民の方々も多く参加された。

<以下、安田さんのお話の要約>

 今年、『地震と虐殺19232024』(中央公論新社)という本を刊行した。なぜ殺されたのか、誰が殺したのかを問い、まとめたものだ。。(荒川河川敷で追悼行事を続けてきた)シン・ミンジャさんの「私が殺されないために」という言葉が(自分の)全身に刻印された。だからまず確認したい。私たちの社会は殺してきた。殺さない、殺されない、殺させないために何ができるのかを。

 今日も、川口のクルド料理店で美味しいクルド料理を食べてきた。(皆さんも)ぜひ足を運んでほしい。食べることで、民族を、国を知ること、理解することができる。(2005年にトルコから川口に来た女性から聞き取った話から)クルド人は(トルコ国内で)大弾圧を受けてきた。川口で哺乳瓶を製造する工場で働き、年上の日本人女性が親切にしてくれた。タクシーの運転手は、クルド語を「きれいな言葉ですね。音楽を聴いているみたい」と言ってくれた。子どもの頃、停電があると家族皆で星を眺めた。(想い出の数々)クルド人がよく言う「マチュデイ」という言葉がある。直訳すると「何があったか」「どんな人生を生きたか」というようなその場の苦しさ、つらさを乗り越えるという意味合いで使われてきた。多くのクルド人がこの言葉を吐きながら過ごしている。

 そして今日の蕨で起こったこと。「ヘイトデモ禁止」の仮処分が出たのに、(レイシストたちが)日の丸を掲げて登場した。正直ムカついている。彼らは言う「川口、蕨は怖い」と。

 本当に怖がっているのは、クルド人ではないか。許せないのは、自分(たち)が絶対的に優越的な地位にいるところで「怖い」と煽っていることだ。(画像でこれまでのヘイトデモの様子。ネット上で飛び交うデマ、差別むきだしの罵詈雑言の数々を紹介)。「川口、蕨は治安が悪い」って? この連中こそが治安を悪化させているのだ。(今世紀に入って)選挙を利用して差別を煽り、差別を煽るために立候補する事例も増加している。

 川口はもともと工場が多く、多くの外国人労働者が働く街だ。イラン人たちも最初に馴染んだのは川口だった。(オーバーステイから技能実習生、南米日系人など、日本における外国人労働者の歴史過程を解説)。現在、川口周辺の解体業者の半分以上がクルド人。日本の元請業者でクルド人の解体業者の悪口を言う人はいない。(解体業の現場を体験取材した話)朝は5時集合。何故、そんなに早くか?

 遅くなると首都高が混んで仕事にならない。きつい作業に加えて、騒音、ほこりなど、周辺住民への気の遣いようも大変。何かあれば「外人だから」と広まってしまうからだ。そしてどんなに疲れても、帰りに首都高を越えて川口の街の灯を見るとホッとしたものだ。しかし今は、(SNSのせいで)そう思えなくなったという。

 川口市の外国人はこの20年間で1万6千人から4万人に増えたが、外国人の犯罪件数は減っている。「クルド人が犯罪」と、デマをまき散らす連中は、沖縄に行って米軍の性犯罪に一言でも抗議してみろと。(沖縄における米軍による犯罪件数の歴史的推移を示す)。

 産経新聞の一面トップ記事がひどい。日本で難民申請したクルド人について、(入管職員などが)トルコへ出張調査して身内に聞いたところ、難民ではないことが分かったと。しかし調査する際にトルコの治安機関の人間が同行していたら(迫害されていると)本当のことを言えるはずもない。もっと許せない事例が、SNSで流された、スーパーの店内を歩く4歳のクルド人の女児を映し「万引きをしている」とデマ情報を拡散したこと。スーパーに直接取材して、事実無根であることを確認した。中学生の姉は毎日、SNSでヘイト投稿をチェックしていた。そうしたら自分の妹の画像が出てきたのだという。それを聞いて泣いた。私たちの社会がこうさせているのだ。こんな社会でいいのか。

(芝園団地をめぐって)かつて中国人入居者へのヘイト落書きが蔓延し、住民の憩いの場である野外のテーブルがヘイト落書きだらけになった。それを塗り替える作業が有志の人たちで始まる。そしていろんな国の子供たちが、そこに手形を押す。「私たちはここに住んでいる」と、差別の象徴だったテーブルが塗り替えられることで心も変わってゆく。(テーブルの画像が示される)社会の再生は、(少しずつでも)こういうところから始まる。「中国人は自治会費を払わない」と言われた話があった。(取材してみると)中国人側は自治会費のことを知らされていなかったという。(日本人の側に)「集金に行くのが怖いので行ってない」という人もいた。それで中国語と日本語でコミュニケーションを取り始めると、問題は徐々に解決していった。盆踊りのやぐらが壊された事件では、何の根拠もなく中国人の仕業とされた、しかしやったのは日本人だった。一方、差別者たちは、ターゲットを中国人からクルド人に変えた。昨年までは「川口は中国人に支配されている」、今は「クルド人に支配されている」に入れ替わった。

 「国に帰れ」というのはヘイトスピーチである。在留資格がどうであろうが、人種差別は違法である。ヘイトはSNSなどで下から持ち上がってくるものだけでなく、上からお差別(権力、権力者の差別煽動)からも学んでゆく。(この社会構造を)変えていかなければならない。

 (表現規制について)自分は週刊誌記者で働いてきた。表現規制そのものは反対だ。しかし今、誰が、表現を、ことばを、奪われているのか。クルド人が、(自分の趣味の世界であっても)SNSで自由に発信すればたちまちバッシングされる。だから表現が奪われている、その人たちの表現を取り戻すためにも、差別表現は規制されるべきだ。差別は犯罪なのだ。(差別を認める)社会はたまらなく嫌だ。生きにくい、美しくない。きれいごとと言われようが言い続ける。皆さんとともに。

<以上>

 講演に続いて地元で活動する「埼玉から差別をなくす会」から報告とアピールがなされた。結成は20243月、マジョリティの立場からこの問題を解決しようと、川口市や埼玉県議会に公開質問状を提出し、ヘイトスピーチ規制条例の制定を求める要望書を提出した。しかし行政の反応は鈍く、道程は厳しい。また市民へのアンケートにも取り組み、差別はよくないと感じている人の声は多いがヘイトに流される人も増えている。差別はよくないが、(どっちも)うるさいとか、チラシももらわれにくくなっていると。注目したいのは、蕨駅前のパチンコ店でのアプローチで、この店はレイシストのたまり場であったが、対してパチンコ仲間に広めることができた。街頭でのスタンディングの拡がりや、読書スペースの試みなど、地域の草の根からの実践と成果が報告された。

 さらに会場から、蕨駅東口で「NOヘイトスタンディング」を始めた有志の方からのアピールも。集会は21過ぎまで熱気あふれる雰囲気で、懸念された妨害もなく終了。6万円近くのカンパが寄せられた。今後の取り組みにつなげていきたい。


ー差別・排外主義を許さない!7月講演集会ー

今、話したいこと―となりに住んでる世界のひと

差別・排外主義に反対する連絡会は結成14年を迎えます。
差別解消法の成立にもかかわらず、差別・排外主義は激化し巧妙化しているように思われます。
これに抗する闘いを拡げてゆくため、この集会を企画しました。金井真紀さんを講師にお招きします。
金井さんとはこれまでも「難民・移民フェス」などの現場を共有してきました。また、2022年2月には安田浩一さんとの共著『戦争とバスタオル』(亜紀書房)の取材秘話をお二人にお話しいただきました。
今回は難民・移民問題をはじめ、多様な経験や取材もふまえたお話を存分にお聞かせいただきたいと思います。

 お誘い合ってご参加ください。

【講演】金井真紀さん  ※プロフィールはこちらをクリックください
【日時】2024年7月7日(日)14:00開始   終了予定16:30
【会場】 品川区中小企業センター
(大井町駅東口から徒歩10分、東急の下神明駅から徒歩2分。品川区西品川1-28-3)         
【資料代】 500円      
【交流会】終了後は同じ会場で交流会を予定しております。
参加費はお酒を飲む方は2,000円、ソフトドリンクだけの方は1,000円をご用意ください。
持込も大歓迎です。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。
PDF版のビラはこちらをクリック願います

【この集会の報告】
   7.7金井真紀さん講演  「となりに住んでる世界の人」

 7月7日、差別・排外主義を許さない講演集会が、品川区中小企業センターで行われた

(参加者35人)。今回の講師・金井真紀さんは、イラストレーター&文筆家として多くの著書があり、「難民・移民フェス」実行委の中心メンバーとしても活動している。連絡会では20222月に、安田浩一さんと対話形式の催しを試みた。二人が国内外の温泉をめぐりながら、その土地の戦争や差別の歴史に想いを馳せるというユニークな著書『戦争とバスタオル』(亜紀書房)をメインに、取材秘話などを語ってもらったのだった。

 今回のテーマは「今、話したいこと となりに住んでる世界のひと」と題して、これまで書いた本を紹介しながら、エピソードや思うことをフリーに語ってもらう形式で引き受けていただいた。

 『パリのすてきなおじさん』(柏書房)。は、パリ郊外のヴァンセンヌ競馬場というところに行って、おじさんを「ナンパ」して話を聞くというもの。アルジェリアとかマリとか、いろんな国から来た人たちのドラマが語られる。『世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし』(カンゼン)は、サッカー競技や選手の話ではなく、サポーターの話が中心。サッカー場は差別の温床で、人種差別や同性愛差別もむき出しになる。その一方で、迫害されてきたクルド人のチームやサポーターのことなど、サポーターの人たちに接して見えてきた意外なエピソードも。

 『世界のおすもうさん』(岩波書店 和田静香との共著)は、「沖縄角力(すもう)」との出合いから世界中の相撲を取材するという大胆な企画。沖縄の相撲大会は米兵も参加するという。仕切りと立ち合いがあるのは日本だけで、各国の相撲のスタイル(女性も多い)の違いが面白い。金井さん自身も相撲が大好きで、何と自身も回しをつけて土俵に上がるなど相撲愛に満ちあふれる。『世界ことわざ紀行』(岩波書店)は、世界中の面白いことわざを収集。生活の知恵的なものから、政治や宗教を皮肉ったものまで紹介する。

 『日本に住んでる世界の人』(大和書房)は、金井さんが入管や難民の問題を取り組むきっかけとなった。たとえばコンゴのJさんは、2022年に国会前でシットインを始めたときにサポートしてくれた人。コンゴの地元の言葉である「ギンガラ語」を教えてもらったり、難民フェスで出会ったクルドの女性からは料理教室に誘ってくれたことなど、思わぬ出会いがたくさん。そして10日前に刊行したばかりの『テヘランのすてきな女』(晶文社)は、圧政下で自由を求めて闘うイランの女性たちに取材した。マイノリティの権利のために奮闘する女性弁護士、「自由を求める旗は1個ずつ運ばれる」と、イランの魅力的な女たちの生き生きとした姿が見えてくる。

 金井さんのフィールドは驚くほど多様で面白い。その行動力と感性のもとになっているのは、好奇心と遊び心であり、人それぞれがその人らしく生きられる社会を目指して行動すること。世界を巡る旅はこれからも続く。

 講演後の質疑を経て、会場内で行われた交流会にも、金井さんと、初めての参加者も何人か参加され、充実した催しとなった。

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文化的ジェノサイドを許さない!3.24講演集会
―2つの『追悼碑』から考える―


 1月29日 群馬の森で県職員が誰もいない強制連行朝鮮人犠牲者追悼碑に代執行を告げる。碑はあっという間に粉々にされ更地に。2004年建立から10年後、追悼集会参加者の発言を理由に県は許可更新を拒否。20年後に県は碑を破壊した。

 9月1日 横網町公園にある関東大震災朝鮮人虐殺追悼碑の前で9月1日に行われる追悼集会。
 極右団体「そよ風」が2017年以後毎年歴史を否定し犠牲者を冒とくするヘイト集会をぶつける。歴代都知事が追悼集会に送った追悼文を2017年以後小池都知事は送らない。

 群馬では言葉を伝え、東京では言葉を伝えない。追悼碑との出会いや対話の機会を奪う試みは文化的ジェノサイドだ。
アーティスト飯山由貴さんをお招きし「ふたつの追悼碑」について皆さんと考えていきたい。

講師:飯山由貴さん(アーティスト)
場所:大久保地域センター 3階 会議室A(新宿区大久保2丁目12番7号 JR山手線 「新大久保」駅から 徒歩8分)
日時:2024年3月24日(日)13:30開場 14:00開始 
資料代:500円

PDF版のビラはこちらをクリック願います

【この集会の報告】
 324日、大久保地域センターにて「2つの『追悼碑』から考える 文化的ジェノサイドを許さない3.24講演集会」が連絡会主催で行われた(63人参加)。129日、群馬の森における朝鮮人犠牲者追悼碑に行政代執行が強行され、碑は粉々に破壊された。この暴挙に、飯山由貴さん(講演者)らアーティスト有志が群馬県に強制撤去反対の要望書を提出した。一方で、東京・横網町公園にある関東大震災朝鮮人犠牲者の追悼碑に極右団体「そよ風」らが碑の撤去を叫び、小池都知事が追悼メッセージを取り止めた2017年以来、同じ公園内で差別煽動の集会を行ってきた。飯山さんは、2022年「東京都人権プラザ」で開催された企画展に関東大震災の朝鮮人虐殺をテーマに取り入れた映像作品「In Mates」を出品したところ、東京都人権部の検閲によって中止させられた。こうした追悼碑をめぐる出会いや学び、対話の機会を奪うということは、まさしく「文化的ジェノサイド」である。講演集会ではまず、飯山さんが解説しながら「In Mates」が上映された。

<以下 講演要旨>
 私はアーティストとしては2013年頃から活動してきました(主に映像作品)。一番気になったのは、一方が一方を支配する関係、たとえば医療従事者と患者、家族の中での権力的振る舞いなどです。それが何故起きるのか、なるべくその背景にある構造を描こうと努力してきました。こうした活動のきっかけになったの妹の存在です。妹は「統合失調症」を抱えてきましたが、それまでは妹の語ることば、振る舞いを受け入れることができなかった。私は別の作品で、ハンセン病で療養所に暮らす女性の話を聞く機会があり、とても大きな経験で感銘を受けました。そこから自分の家族に対して抑圧していたのではないか、やりすごしていたのではないか、と捉え返し、違う目で妹を見るようになりました。それで、彼女の幻覚や幻聴を一緒に再現しよう、2人でカメラを頭につけて、散歩することを試みました。妹も今まで話さなかったことを話すようになったのです。それから精神を病んだ人たちのことばって、日本の精神医療の中でどういう風に扱われてきたのだろうと、精神医学史の研究者である鈴木晃仁さんにインタビューしました。研究室には沢山の資料があり、その中に王子脳病院(1920年代当時)の診療記録がありました。これに関するインタビュー作品を作りはじめ、そのなかで分かったのは(当時は)患者さんは「話すこと」を求められ、それが記録になったこと。ただし(あくまで)記録は権力や制度の側の一方的ものなので、当事者と一緒に記録をつくってゆく必要性に気づいたことです。
 2020年、横浜で開催されたトリエンナーレに出品した「OLD LONG STAY」(一部を上映)は在日外国人の無年金障がい者をテーマにした作品です。(私は)在日コリアンの高齢者の方が年金制度から排除されてきたことを知ったのは、2019年に東九条で参加したフィールドワークの時です。理不尽な差別の構造に気づく一方で、差別排外主義者らの運動が活性化する一つとして、「在日の特権だ」として攻撃される。しかし国は格差や差別の構造をあらためようともしません。

 その中で作った『OLD~』は、運動に直接かかわるきっかけになりました。この作品のあとに手がけたのが『In Mates』。(先述した)王子脳病院の診療記録にあった朝鮮人患者のAさんとBさんの記録に基づいてFUNIさんが話をつくって、それをパフォーマンスにすることで2人を蘇らせることができました。AさんとBさんは階級とか教育とか働いていた場所とかは全然違っていて、AからBにコミュニケーションを求めた時にBから拒絶され、錯乱状態になって「朝鮮人みな殺す」とか言ってしまう。そうした人生の一場面に、日本の植民地支配の歪みが見えてきます。この二人が見た世界を自分の作品として多くの人に伝えられないかと思いました。FUNIさん自身が社会で経験した痛みや苦しみやトラウマみたいなものを二人の関係に肉付けしてくれて作品に結実しました。また作品を作る上で、鈴木先生と歴史学者の外村大さんにレクチャー―を受けました。外村さんは、Aさんの「朝鮮人を殺す」という言葉は、関東大震災の朝鮮人虐殺が背景にあって、それが心身に影響したんじゃないかと指摘され、それは大きな示唆でした。

 その「殺す」の一言が都の人権部の検閲となったわけですが、自分自身は(虐殺は)あったと認識していたとしても、そんなに関心を持っていただろうかと気づかされました。たとえば日本社会における大きな慰霊のイベントである広島や沖縄のように、虐殺が「集団的記憶」にいならなかったのは何故なのか。それは植民地支配だったことでずっと見過ごされ、軽視されてきたからではなかったか。もう1点、重要だと思うことは、黒人神学の創設者の一人であるジェームズ・H・コーン氏が、在日韓国キリスト教会との交流を通じて黒人が受けている差別・抑圧と、在日コリアンが受けている差別・抑圧との類似性を認識することによって、国境を越えて、すべての人を解放する解放の神学を再創造させるきっかけになったと書いたのを読んで、各々の属性のなかで闘争が持つ交差性みたいなものが連帯だと考えるようになったことです。

 さらに今日のパレスチナの問題に引き付ければ、中村一成さんの「パレスチナの歴史的鏡像としての在日朝鮮人」というテキストを読んで、ここで引用されているガヤトリ・C・スピヴァクが96年の来日時のインタビューのなかで言及した「アジア大陸の両端には2つの不条理がある」と、それは日本とイスラエルだと、いずれも歴史的責任を認めず、ともに生きるべき隣人を頑強に拒み、西洋の一員になることを欲する。特定の人種や民族的集団を「敵」「悪」「劣なる者」と措定し、剥き出しのレイシズム国家だとする点で、両国は大陸の両端で相似形をなすという指摘に納得しました。インターセクショナリティという概念は、重複するマイノリティ性がある人の経験を説明するのに使われてきた。どうすればこのような問題を共に考え、闘争を組織化できるのか、ともに考え、実践する上で重要な問いだと思います。

 最後に、東京都人権部の「検閲」と、群馬の碑撤去に関して、自分がどう関わってきたか。(人権部のメールの内容など、一連の経緯を説明)結果的には展覧会が人質にとられた。これ以上ごねると展覧会が出来なくなると人権プラザの職員にも言われました。やはりこのメール問題は重く、小池都知事の「虐殺否定」を都の職員が内面化しています。これはもう外部化するしかないと、最終的には上映中止は飲む形で展覧会は実施し、その後、抗議の署名3万筆を都に提出しました。さらに署名は4万5千筆に増えたので、都知事選が終わったところで、もう一度提出したいと思っているので、是非拡散をお願いしたい。

 その後の情報開示請求で分かったことがあって、それは2022年7月の時点で人権部が作品を「人権そのものに抵触している。都の人権啓発事業として用いるのは適当ではない」判断していたこと。これは要望書の提出以降に分かったことなので別途追及していきたい。去年は91に向けて都庁前での直接行動を続け、当日は申入れ、ライブ、トーク、ダイイン、デモなどを行いました。今年も何らかの行動を呼びかける予定です。

 (群馬の碑撤去への抗議行動など一連の経緯を説明)榎澤幸弘さんという方が、「ジェノサイド条約と文化的ジェノサイド」という論文のなかで、歴史的、芸術的もしくは宗教的価値のある文書、物品を破壊したり、その使用を変えさせることは文化的ジェノサイドだと提起しています。今回の碑の撤去は、人々が集う場所であり、モニュメントを行政権力が破壊するのを企図したことで明白に文化的ジェノサイドです。日本という国が、日本語を話す日本国籍の日本人に、すべてのマイノリティを合わせていくような、少数者の生きた証を押しつぶすやり方に、どうすれば対抗できるか。少なくとも私たち自身が、自分の記憶と経験を話し、伝えてゆくことから始めるしかないと考えています。当面の取り組みの一つとして「行政の人権侵害を考える会・関東(仮)」を立ち上げたい。ぜひご参加を!


これ以前の集会やデモの記録はこちらをクリックください